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「浄められた夜」 リヒャルト・デーメル
男と女が寒々とした裸の林のなかを歩んでいる、
月がその歩みに付き添い、ふたりを見おろしている。
月は高いかしの木の梢の上にかかっている、
空は澄み渡り、一片の雲もなく、
黒い木の梢が空にのこぎりの歯のように突き刺さっている。
女がひとり語りはじめる
わたしは身ごもっています、でもあなたの子ではありません。
わたしは罪に苦しみながらあなたと歩んでいるのです。
わたしはひどい過ちを犯してしまったのです。
もう幸せになれるなどと思いもしませんでした、
それなのにどうしても思いを断てなかったのです、
子供を生むこと、母となるよろこびとその義務を。
それで思い切って身を委ねてしまったのです。
おぞましい思いをしながらも女としての性(サガ)を、
心も通わぬ男のなすがままにさせてしまったのです、
それでも満ち足りた思いをしたのでした。
ところが人生は何という復讐をするのでしょう、
わたしはあなたと、ああ、あなたと出会ったのです。
女はとぼとぼと歩んでゆく、
女は空を見上げる、月がともについてくる、
彼女の暗い瞳が月の光でいっぱいに満ちる、
男がひとり語りはじめる
きみの身ごもっている子供を
きみの心の重荷とは思わぬように。
ほら見てごらん、あたりはなんと明るくかがやいていることか!
このかがやきは森羅万象にくまなくおよんでいる、
きみはぼくと冷たい海の上を渡っている、
でもその底ではあたたかさが交流している、
きみからぼくへ、ぼくからきみへと。
このあたたかさがお腹の子を変容させるだろう、
きみはその子をぼくの子として産んでほしい、
きみはこのかがやきでぼくを変容させてくれた、
きみはぼくそのものを子供にしたのだ。
男は女の厚い腰を抱いた、
ふたりの息はあたたかくまじり合った。
男と女は明るく高い夜空のなかを歩んでゆく。
(訳:喜多尾道冬)
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